NPO法人日本TRIZ協会 設立趣旨書(全文)



前世紀の半ば、当時のソ連邦で生まれた思考作業改善理論の一つであるTRIZは、ソ連邦解体後1990年代にアメリカ、欧州で急速に普及し、今世紀に入ると韓国、中国、台湾、マレーシアを始めとするアジア各国でも普及が進み、製品の開発、技術の改良、知的財産の強化などの分野で活用され、各地において科学・技術の発展に貢献している。TRIZは技術史や特許資料の分析から得た教訓を利用して製品や技術の研究開発において合理的な思考作業を可能にする理論であり、この普及は公益に大きく寄与することが期待される。

TRIZは平成8年に日本に紹介され、その後、個別の企業、大学、その他の団体、あるいは個人の力により徐々に普及しつつあるものの、現状では、TRIZを活用し、又は、TRIZについて研究をしている人々が集まり、情報を交換し、協力するための日本全体としての場が存在しないため、普及の足取り、活用の高度化、研究の深化が遅れている状態である。

TRIZは上記のように活用の成果が挙がっているが、同時に、ソ連邦生まれのTRIZを自由主義経済化の理論として革新し、活用方法を改良する動きも世界各地で行われている。日本に於けるTRIZを欧米やアジア各国に後れを取らず進化させるためには、日本のTRIZ関係者が所属する個別組織の枠組みを越えて交流・協力することが求められ、そのための場を提供する組織が存在することが強く望まれる。

こうした状況に共通した認識を持つ関係者が集まり、平成17年、平成18年の二回にわたり日本内外でTRIZに関心を持つ人々に広く呼びかけ、日本TRIZシンポジウムを開催し、交流・協力の場を提供してきた。その結果、個人主体の手作りの企画にも関わらず、平成18年には150名を越える参加者を得、TRIZに対する関心の高さが証明された結果となった。

シンポジウムの主催者はこの成果を踏まえて、この企画を継続して開催すると共に、小規模の研究会の主催や、会誌、インターネットでの情報発信、その他複数の手段を用いて、情報交換、交流、協力の場を提供して日本に於けるTRIZの普及、改善に貢献し、技術革新と産業活性化を促し、生活・文化の向上に寄与したいと考えるに至った。

TRIZは企業や団体の競争力を高めるための方法として利用される理論であるため、上述の個別組織の枠組を超えた交流の場を提供する新しい組織は、不偏不党かつ自らの利益を追求しないものであることが必要であり、また、このような場を継続して提供してゆくためには、資産を継承することが可能な法人組織が必要と判断して、特定非営利活動法人の設立を決意したものである。